2015年3月25日水曜日

2015.3.25 共同提案「再生可能エネルギーで北海道の地域活性化を」

一般社団法人北海道再生可能エネルギー振興機構と北海道エネルギーチェンジ100ネットワークは、今年4月の地方選挙において、北海道が直面する政策的諸課題を明らかにし、議論が活発化することを願い、政策課題のうちでも重要なエネルギー問題について提案いたします。

2015年3月25日


一般社団法人 北海道再生可能エネルギー振興機構 理事長:鈴木 亨 担当者:田原 沙弥香 北海道エネルギーチェンジ100ネットワーク 代表:宮本 尚


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一般社団法人北海道再生可能エネルギー振興機構
北海道エネルギーチェンジ100ネットワーク
共同提案
「再生可能エネルギーで北海道の地域活性化を」
はじめに
今年4月の地方選挙において、北海道が直面する政策的諸課題を明らかにし、議論が活発化することを願い、政策課題のうちでも重要なエネルギー問題について、提案します。


北海道における再生可能エネルギーの現状と課題
 北海道は北海道電力の電力料金の2度の値上げにより、日本でも一番高い電力料金になりました。オール電化の家庭や冷蔵庫・冷凍庫の利用などの他、農業と漁業などの1次産業に与える影響も深刻になっています。
 一方で北海道はもともと再生可能エネルギー(以下、再エネ)の潜在的賦存量が多い地域です。北海道が行った再エネポテンシャル調査によれば(北海道「新エネルギー導入・拡大に向けた基本方向」20143月、資料参照)、太陽光、風力、中小水力、地熱発電、バイオガス、木質系バイオマスのそれぞれにおいて各地域の特性に応じて大きな利用可能性をもっています。2012年から導入されたFIT制度によって太陽光を中心に導入量が増加しましたが、送電系統の制約を理由に指定電気事業者制度が導入されました。この制度では、電気事業者が再エネ事業者に、年間30日を超える無制限の出力抑制を求めることができ、かつ再エネ事業者は出力抑制により生じた損失の補償を求めることができない制度になっています。これにより、とくに資金力の弱い地域の中小事業者や市民が再エネを導入する際に、金融機関からの融資を受けられない可能性が出てきました。せっかくの再エネポテンシャルを活かせなくなります。また、再エネ接続可能量を算定する前提条件が、福島第一原発事故以前の原発の設備利用率(84%)をベースにしていることから、現在政府で検討されているエネルギーミックスの議論の行方が、今後の再エネ導入量を大きく左右することになります。
 また、2020年以降の温室効果ガスの排出量削減の具体的枠組みを決定するCOP21(本年11月、パリで開催)に向けて、我が国の地球温暖化対策に対する姿勢を世界に発信するためには、再エネの最大限の導入目標設定が重要と考えますが、それには北海道の役割が肝心です。
 他方で、北海道再生可能エネルギー振興機構がこのほど行った、北海道の自治体(141自治体、回答率78.8%)に対するアンケート調査によれば(資料参照)、エネルギーの地産地消、雇用効果など、再生可能エネルギーに対する期待が高まっています。そのエネルギーの地産地消による雇用効果も、道内の関連産業が育てば、一層期待できます。小磯修二教授(北大公共政策大学院)の研究によれば、再エネによる生産誘発効果は約2600億円、雇用効果は約11000人が見込まれています(小磯修二「再生可能エネルギーと地域の自立的発展」『開発こうほう』20133月号、資料参照)。


「再エネ北海道創生プログラム」の提案
   ー再エネ・省エネ拡大、地域活性化のために
以上の現状と課題を踏まえて、再エネ・省エネ拡大による北海道の地域活性化の提案を行います。
  1. 再エネによる地産地消をすすめ、地域活性化をはかり、そのための政策的支援、情報提供をすすめることが重要です。中長期的な再エネシフトを明確化する必要があります。農業、漁業など基幹産業で再エネを活用した地方創生の取組みや、北海道が本州への再エネ供給基地となり、新産業創出・雇用の拡大を目指す取り組みが重要です。
  2. 再エネの導入拡大とともに、熱の効果的利用、熱電併給システムの導入拡大など、再エネと省エネをセットで進めることで、積雪寒冷地の北海道における豊かな暮らしと災害時におけるエネルギーの確保、スマートシティの実現を目指す必要があります。その障壁となる規制の緩和や導入を推進するための政策的支援の拡充が必要です。省エネインセンティブ型の電力料金体系の検討も必要です。
  3. そのために再エネの送電網への優先接続というFIT法の原則を、あらためて確立するように、国に働きかける必要があります。そして、再生可能エネルギー受益者を抜本的に増やすことが必要です(事業従事者+出資配当+寄付基金受益者など)。
  4. 電力自由化と発送電分離を見通した北海道の電力システム改革をすすめるために、北本連系線の利用枠の拡大と道内送電網の強化を行う必要があります。その上で、さらなる北本連系線の抜本的強化を図ることも重要となってきます。
  5. 再エネの出力抑制により低くなった再エネ事業者の金融機関への信用力を担保する為、地域貢献を行う地域再エネ事業者に対して、FIT制度に上乗せして活用できる補助金(収益納付や寄付などの形で補助金を戻してもらう方法であり、収益納付型補助金として来年度4月より長野県にて実施予定)、固定資産減税免、など一連の政策パッケージを検討することが必要です。


 以上、私たちは、再エネ・省エネ拡大による地域活性化を、国、北海道、各市町村に向けて提案します。その早期実現のためには、各市町村が地域の特性を反映した再エネ条例などを制定していくこと、道などが主体となって関係者、市民に呼びかけ、「道民エネルギー会議」を開催し、そこで現状認識と政策課題を明らかにすること、「北海道条例第百八号 北海道省エネルギー・新エネルギー促進条例」のもとで規制改革をすすめることが必要です。

 今、すべての道民が、住民参加と透明性を基本とした社会で、私たちの暮らしに大変重要なエネルギー問題についての現状認識を共有し、枠組みと目標の設定の議論に参加し徹底的に議論して、政策づくりに関わっていくことが必要な機であると考えます。北海道の未来への責任と希望をわかちあうための公論形成の場づくりが、新しいリーダーの役割として期待されているのです。

 北海道は今後、人口減少が予想され、かつ1次産業をめぐる状況が厳しさを増していくなかで、北海道の再エネと省エネのポテンシャルを活かすことは、地域経済を活性化する有効な手段です。原子力のリスク、気候変動のリスクを減らしながら、21世紀の展望を切り開くためのエネルギーは、道民の意志と行動の結集によって生み出すことができると確信し、この提案を提出いたします。


2015年325
一般社団法人北海道再生可能エネルギー振興機構
北海道エネルギーチェンジ100ネットワーク


<問い合わせ連絡先> 一般社団法人北海道再生可能エネルギー振興機構 担当:田原
060-0061 札幌市中央区南1条西6丁目15-1 札幌あおばビル11
TEL/011-223-2062 FAX/011-223-2063 E-mail/tahara-sayaka@reoh.org 資料はこちらをご覧ください。

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一般社団法人北海道再生可能エネルギー振興機構  http://www.reoh.org/
201212月、「北海道において再生可能エネルギーの導入を拡大し、地球環境の保全とエネルギー自給率の向上、そして地域経済社会の発展に寄与する」ことを目的として設立。道内77市町村と、企業・個人合わせて62の会員からなる。地域主導による北海道の再生可能エネルギーを普及拡大する為の情報提供やイベントの開催、また昨年12月には道内全市町村へ向けて「北海道における再生可能エネルギー導入に関する意向調査」を実施し、再生可能エネルギー導入に対する意向と課題について得られた結果を公表した。
北海道エネルギーチェンジ100ネットワーク  http://www.enechan100.com/
20116月、地産地消エネルギーの最大限の活用、自然エネルギーアイランドへのシフトをめざし、当団体の前身である「北海道エネルギーチェンジ100プロジェクト」がスタート。「北海道条例第百八号 北海道省エネルギー・新エネルギー促進条例」の周知・推進、「北海道の電気 再生可能エネルギー100%へのロードマップ」による提言、市民主体のセミナーなどを開催。 20143月に、3年間の活動が評価され、北海道新聞エコ大賞奨励賞を受賞。 20145月に正式に団体「北海道エネルギーチェンジ100ネットワーク」を設立、「自然エネルギー100%の北海道」に向かって、見えるネットワーク、行動するネットワークづくりをめざす