2014年6月9日月曜日

「北海道エネルギーチェンジ100ネットワーク」設立趣意書



■はじめに…「エネルギーチェンジ」は、生きる力の源を見つめる活動です

  2011年3月11日の東日本大震災、そして東京電力福島第一原子力発電所の事故は、私たちの暮らしを支える基盤の脆弱さと、私たちが暮らしの安全や安心を主体的に選択してこなかったことに気づく契機となりました。二度とこのような過ちを繰り返さないために、市民に何ができるのかを考え、選択したのが「エネルギーチェンジ」です。 「エネルギーチェンジ」は、単に燃料や電気といった資源の転換をめざす活動ではありません。より持続可能な方向に社会の舵を取るために、一人一人が今の暮らしを「衣食住」すべての視点で検証し、最善の選択をすることを目指す取組みです。市民の意志が社会をより良い方向に導くエネルギーとなることが目標です。2016年には電力小売の全面自由化が予定されています。市民が自然エネルギーを選択するための基盤づくりが急務と考えます。


■これまでの歩み…プロジェクトからネットワークへ

 2011年6月、認定NPO法人北海道市民環境ネットワークの会員有志が呼びかけ人となり、地産地消エネルギーの最大限の活用、自然エネルギーアイランドへのシフトをめざし「北海道エネルギーチェンジ100プロジェクト」がスタート。以来3年間「北海道省エネルギー・新エネルギー促進条例」の周知、「北海道の電気 再生可能エネルギー100%へのロードマップ」の作成、「市民のエネルギーチェンジ研究会」の開催などの活動を行いました。2014年3月には、活動が評価され、北海道新聞エコ大賞奨励賞を獲得しました。
 3年間の活動を通じて、道内外で自然エネルギー推進のために活動する多くの市民、団体、企業、自治体、研究者たちに出会いました。私たちは、その思いや活動を共有し、学び合い、支援し合い、「自然エネルギー」推進をさらに大きなムーブメントにする仕組みが必要と考えています。
 プロジェクトからネットワークへ。「北海道エネルギーチェンジ100ネットワーク」は、これまでの活動の理念と成果を引き継ぎ、団体として社会的責任ある立場でネットワークによる活動を行っていきます。


■北海道の意志…北海道条例第百八号「北海道省エネルギー・新エネルギー促進条例」の推進

 2001年1月1日、北海道は全国に先駆けて「北海道条例第百八号 北海道省エネルギー・新エネルギー促進条例」を施行しました。本条例には「積雪寒冷な北海道においてエネルギーが社会経済の健全な発展と生活の安定のために不可欠な要素であることを深く認識し、脱原発の視点に立って、限りある資源を可能な限り将来に引き継ぐとともに、北海道内で自立的に確保できる新しいエネルギーの利用を拡大する責務を有している。」「北海道の自然や産業に根ざし、環境に優しい新しいエネルギーを育むことにより、人と自然が共生し、環境と調和した社会を築いていくことが必要である。」とあります。札幌市が2012年度に実施したエネルギー転換調査の市民に向けたアンケートでも、「再生可能エネルギーの拡大」を望む市民の意志がはっきりと現れています。 私たちは、これらを北海道の意志として「自然エネルギーへのエネルギーチェンジ」を推進します。





■目指す活動…さまざまな主体を結び行動するネットワークに

「北海道エネルギーチェンジ100ネットワーク」では、目的を達成するために、市民、NPO、自治体、関連業者、研究者などをつなぐネットワークを構築し、さまざまな視点・角度の知見や経験、技術などの情報を共有します。ネットワークを活用して、情報交換の場づくり、啓発事業、自然エネルギー推進のための主宰・協働プロジェクト、政策提言などを行います。また、エネルギーの選択についての知見を地域にとどける役割を担う人材として「エネルギーマイスター」の養成、そのためのプログラム開発なども行っていきます。


■提案…自然環境との共存を提案・提言する「北海道モデル」

 自然エネルギーのポテンシャルが高い北海道で、私たちは「自然エネルギー100%アイランド」の実現は可能であると考えます。自然とともにある北海道の豊かさ、多様な自然の生命を保全し、可能なかぎり自然環境への負荷の少ない暮らしをめざすとき、解決法は、私たちが使うエネルギーをできる限り削減する「省エネルギー」、自分で使うエネルギーを太陽光発電などを導入して自分で生み出す「創エネルギー」です。しかし今現在、私たちの衣食住は膨大なエネルギーを消費する産業の上に成り立っており、大規模な発電施設を選択せざるを得ません。
「北海道エネルギーチェンジ100ネットワーク」は、北海道の貴重な自然環境の保全を確保するための調査研究など、自然環境と自然エネルギーの共存のための「北海道モデル」を、市民から提案していきます。 北海道で「自然エネルギー100%」を達成する協働のプロセスが、エネルギーチェンジに取組む国内外の地域の参考となることを期待します。また、北海道がかつて実施した「時のアセス」の志を引き継ぎ、時間や状況の変化、技術の進化などによる「チェンジ」を常に想定し、持続的な検証とデータ蓄積を提案します。人口の減少が予測される今、大地を健やかなまま多様な生物に返還することも、今後の私たちの使命です。


■おわりに…多様な主体、多様な手法、地域の尊厳を認め、高めあう社会へ

 地域での自然エネルギー自給の仕組みは、災害時のライフラインの確保にもつながり、地域の安全・安心な暮らしの基盤となります。また、地域の新しい産業として雇用を生み、地域の自立のひとつのツールとなります。 
 地域の意志が、同じ意志を持つ地域とつながり、多様な地域の特性、地域の尊厳を認め合い、互いに学び支援し合うことで、それぞれの描く未来図を達成していく、その結果として「エネルギーチェンジ」が社会全体を動かすエネルギーとなることを願って、自然との対話の大地である北海道で行動していきます。


2014517
北海道エネルギーチェンジ100ネットワーク設立発起人
 宮本尚 金子正美 鈴木亨 高木晴光 秋山孝二